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2007年9月

庭の桜、隣の犬

庭の桜、隣の犬 Book 庭の桜、隣の犬

著者:角田 光代
販売元:講談社
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35歳の房子と旦那の宗二のからっぽの夫婦の話。

房子はしょっちゅう実家に戻ってゴハンをもらっているような日々。忙しい宗二はなかなか家に帰れないことをきっかけにアパートを借りることに。

なんだか夫婦なのに、そこには愛情が見えなくて、二人はどこに行ってもゼロなんだよね、って言い合っているのがとってもむなしく、さみしい。

その周りの房子両親、宗二母や、宗二の浮気相手(!?)の若い女を通して、二人の関係が変わっていくのかと思いきや、なんだか最後になっても、飄々とした二人の関係は進展するでもなく、相変わらずの無関心に近い関係。

二人とも二人でいることによって何か変わるわけではなく、個人と個人がただ一緒にいるだけだから、何も変われないし生み出せないのだと思う。

人は人を好きになると、どうしようもない感情の高ぶりとかがあって、そんな自分に驚いたり自己嫌悪に陥ったりするんだけど、そういうのが見えないのだ。

「ビジョンがある」ことが重要だという宗二の言葉や、型にはまって「愛人との一戦」を演じる自分に期待してしまう房子の様子は滑稽だけど、役割や型にはまらないと生きていけない都会の現代人をある意味表しているような気がした。

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かげろう

かげろう Book かげろう

著者:藤堂 志津子
販売元:文藝春秋
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40歳前後の女性の物語が三篇。

どれにもあまり共通しているテーマはなくて、人生を振り返って周りの人間との関係を綴っている話だったんだけど、藤堂志津子らしく、しっかり読ませて、客観的に人間というものを見つめられる物語だった。

でもちょっと物足りなかったような・・・

「かげろう」

20以上年上の夫と結婚し、先立たれた後に、その夫の弟子のような夫婦を気に入って養子にするけれど・・・

「あらくれ」

母親の思い通りに生きられなかった主人公は、辺鄙な田舎で食堂を経営し、そこで女性二人を雇いながら養っている。

「みちゆき」

本当は愛していないのに愛人のような関係を結んでいた相手とやっと別れることができてほっとしている主人公。その男の新しい相手は昔の同級生。そしてその同級生から語られる二人の関係を聞いて・・・。

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チョコリエッタ

チョコリエッタ Book チョコリエッタ

著者:大島 真寿美
販売元:角川書店
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「チヨコ」は高校生。

小さいときに、父親の運転する車で母親を亡くし、それ以来仕事ばかりでろくに家にいない父と、その妹のきわこちゃんと一緒に暮らしている。

なんだかココロの中に埋められない傷を抱えているチヨコは、進路指導で犬になりたいと書いてしまう。

愛犬を失った直後だというせいもあるけど、未来に希望も持てないし、何かなげやりな毎日。

そん中、映画部のOBの先輩と再会し、将来について「後を継ぎ医者になれ」というプレッシャーを抱え、うまく生きられないその先輩と過ごすことで、何かを得て、ふっきれていくちよこ。

悪くない前向きな話だけど、私には映画の話はよくわからなかったし、最後があっけなくて、はっきりしないまま(つまり、きわこちゃんや父との関係が実際に見えないまま)終わってしまったので、ちょっと消化不良だった。

あっさりと柔らかい物語。

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がらくた

がらくた Book がらくた

著者:江國 香織
販売元:新潮社
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柊子(45歳)と、海外で出会った少女、美海の二人を中心とした物語。

柊子と夫の関係は独特で、愛し合っているけれど、夫は恋人を持つことを常としていて、その愛人と3人で普通に飲みに行ったりもする。

柊子は夫にベタぼれで、夫の愛人の存在によって逆に自分と夫との愛の深さを確かめて安心したりしている。「赤い長靴」で江國香織が描いていた、「夫と離れている時ほど夫の存在を感じて誇らしくなる」気持ちと似ていると思った。

夫も平気でいろんな女性に手を出して、それを悪びれる風でもなく、逆にそれによって君への愛情が証明されるんだよ、とでも言いたげな余裕をかましている。

こんな微妙な関係、都会の裕福な人たちだからこそ成り立つ関係だとも思った。

人がそれぞれで自立しているから、個性という名前(!?)の元で、人の愛し方のオリジナリティも自分の中のパーソナリティとして含んで、堂々と生きていられるんだ。

理解はできないけれど、小説としては面白い。

美海だって、親が離婚して帰国子女だからちょっと変わっているなんてだけれは済まされない、個性的な少女だ。

ちょっと普通に恋をしているところもあるように思ったけれど、柊子に父と会う(=寝る)よう仕向けたり、結局最後には柊子の夫に処女をささげ、その上で「柊子さんと今度会うのが楽しみ」なんて言ってのける。

そうやってヒミツのようなうそ臭い顔をして、しらばっくれて重ねる人間関係って、私も経験したことはあるけれど、もし世の中がそういうものばかりになってしまったら、安心して生きていくことができなくなってしまうんではないかと思ってしまう。

したり顔の下にどんな想いを隠しているのか。

・・・でも、最近読んだ江國香織の小説の中ではすごく新鮮でとても面白かった。

(最近は入り組んでいて、でも落ちきらない、納得いかない小説が多いような気がしていたから)

すごく経済的に裕福な感じの人たちがたくさん出てくるんだよね、都会的な感じで。

こういうのを読んで面白い、とか共感できるのは、やっぱり私が東京で少し暮らしたことがあるというのも大きいような気がする。

ずっと田舎に住んでいたら、その閉鎖的な、他人行儀な空気を想像するのは難しすぎると思うから。

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トリップ

トリップ Book トリップ

著者:角田 光代
販売元:光文社
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ひとつの町を舞台に、少しずつ登場人物をだぶらせながら続く短編集。

あんまり気持ちいい終わり方ばかりではないけれど、角田光代の短編集の中では、読みやすかったように思う。

(わたしてきに)

人間が生きていく中で、それぞれの人生って、後悔したりすることも多いけど、やり直そうと思ってもできないんだよね、やっぱり。

でもそれをいろいろ思い返したりしていく中で、納得して生きていることに気づいたり、意外と自分が今の生活を気に入っていたりして、なんだかうまくおさまってその後も生きていくことになるんだろうと思う。

悔しくても、生きる力を充電して、また人は生きていかなくちゃいけないのよ。

しんどいけどね。

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ベイビーシャワー

ベイビーシャワー Book ベイビーシャワー

著者:山田 あかね
販売元:小学館
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40歳を向かえシングル(どちらも不倫中)の美園と今日子のふたり。

美園が相手は別として、子供が欲しいと言い出したことに関わるすったもんだの物語。

ちょっと話の時系列がわかりにくくて、せりふも誰が言っているのかわかりにくいところがあって残念。

はじめに、生まれた子供のことから始まっているんだけど、物語は結局、その子が生まれるまでの経緯で終わってしまったので、なんだかもっと生まれる時期の周辺の話が読めると思っていた私は最後拍子抜けした。

でも、作者はテレビ関係の仕事をしているというだけあって、結構リアルで(今日子はドキュメンタリーを撮ったりしているカメラマンという設定)そういうところは興味深く読めた。

ちょっと読みにくかったのは、やっぱり本場の作家さんじゃなかったからかな。

もう少し手直しして本にしてくれてたらな~。

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ホテル・アイリス

ホテル・アイリス (幻冬舎文庫) Book ホテル・アイリス (幻冬舎文庫)

著者:小川 洋子
販売元:幻冬舎
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ホテル・アイリスの一人娘「マリ」は、まるでグリム童話に出てくるような母(実母)にこきつかわれ、高校まで辞めて家業を手伝いその世界に閉じ込められている。

そんな日々が、ロシア翻訳家の老人との逢瀬によって歪んでいき、倒錯的な世界に踏み込んで戻れなくなっていく。

小川洋子の残酷な世界が広がっていてドキドキした。

老人によって、性に目覚め、虐げられることに快感を覚え、離れられなくなっていくマリ。

離れ島にある翻訳家の家で行われる秘密の行為がエスカレートしていくにしたがって、このまま破滅してしまうのが目に見えて怖くなってきた。

そして、翻訳家の血の繋がらない甥が、舌がなくしゃべることができない、という設定もなんとなく残酷で、常に何かダークな匂いを感じさせて目が離せなかった。

最後に翻訳家があっけなく死んでしまい、マリは「誘拐されていたずらされたかわいそうな少女」という形でおさまってしまったのがすごく意外で、あそこまで乱れた秘め事が本当に夢だったようになってしまったところにまた残酷さと物語のおもしろさを感じた。

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東京バンドワゴン

東京バンドワゴン Book 東京バンドワゴン

著者:小路 幸也
販売元:集英社
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古本屋「東京バンドワゴン」を営む一家の悲喜こもごもを描いた長編書き下ろし。

個性的な面々、愛人やらシングルマザーやらいろんな事情があるけれど、それぞれが素直にまっすぐに生きていて、ほほえましい家族と下町独特の笑いと人情が描かれている。

昭和30年代のホームドラマを見ている感じ。

話も、ちょっとうまくできすぎている感じがするけれど、それがまた味となって、読後感がすっきりして楽しかった。

続きが読みたいな~というほのぼのした一冊だった。

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若くない日々

若くない日々 Book 若くない日々

著者:藤堂 志津子
販売元:幻冬舎
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50代を迎えた独身女性の日々を書く短編集。

さすが藤堂志津子だな、と思った。

ひとつひとつの物語について、現代の働くシングル女性の思慮深さやずるさ、哀しみとかを自虐的にかきつつ、いやみじゃない所でまとまっていて、そのくせリアルだ。

しっかりオチもついていて、読んでいて、すっきりする物語ばかりだった。

30手前の私には、50歳のシングル女性というのは想像もつかないけれど、自分もこうなる可能性もあるんだなと思いつつ、堪能した。

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猛スピードで母は

猛スピードで母は Book 猛スピードで母は

著者:長嶋 有
販売元:文藝春秋
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「サイドカーに犬」

映画化。

主人公の薫が小学生の時に出会った父の愛人との不思議な関係が綴られていた。

母親が家出した時に家事をするような形で家に来るようになった「ようこさん」。

破天荒な父親は母がいない間に友人を家に招きいれたり、その食事の世話をようこさんにさせたり。

でも薫はそんな変な日常を受け入れて、ようこさんと友達のような妙な親しみを持っていく。

結局母親が戻ってきて修羅場のあと、父親は罪をおかして(泥棒)、離婚。

その不思議な生活を思い出したような物語になっている。

なんだか変な話だと思いつつ、目が離せなかった。

「猛スピードで母は」

第126回芥川賞受賞作。

小学6年生の慎と母の2人暮らしの物語。

ほんの少し変わり者の母と暮らす慎の目から見る日常。

再婚話が出たけれど結局だめになってしまったり、

母の実家に顔を出した時の話があったり、

北海道のM市に暮らすちょっとした日常が綴られているんだけど、

悪くないなーという感じ。

何かものすごく大きな出来事があるわけではないし、

大きな感情の起伏があるわけでもないけれど、

淡々と過ぎる毎日の中で、親子の交わりというか関わりがほどよい距離で書かれていて、

楽しかった。

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パーク・ライフ

パーク・ライフ Book パーク・ライフ

著者:吉田 修一
販売元:文藝春秋
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パーク・ライフ

第127回芥川賞受賞作。

ある日地下鉄で出会った女性と、日比谷公園で交わす会話を中心に、

淡々と会社員の主人公の毎日が綴られる。

なんだか、退屈な物語だった。

多くを語らないすっきりした風のような文章はセンスを感じさせて気持ちよかったけれど、「読み応え」というものが感じられなかったから、読後も残るものがなかった。

残念。

Flower

???

主人公が東京で勤めはじめた先で出会った「元旦」という人間、田舎の福岡での花を生ける話、など。

乱交とか書かれて、ひいた。

よくわからない話。

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再婚生活

再婚生活 Book 再婚生活

著者:山本 文緒
販売元:角川書店
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「プラナリア」で直木賞を受賞した山本文緒。

その後、新しい作品がたくさん出てくると思っていたのに一向にその気配がない。

おっかしーなーと思っていたら、案の定、うつ病でなかなか執筆活動が進まなかったらしい。

そのことを新聞で読んでから、そのうつ病生活を綴った連載が一冊の本になったと聞いてすごく読みたかったのだ。

いつの間にか再婚をして、うつ病と戦って、そして、やっとかなり回復してきたらしい山本文緒の作品を久しぶりに読むことができた。

文章は決して後ろ向きではないけれど、やっぱり、うつ病の人が書いているものというのは、(というか、薬が必要だったり、落ちている様子を聞くのは)ちょっとしんどい部分がある。

私も読みながら正直ちょっとよどんだ気持ちになった。

苦しいんだろうな~、大丈夫かな~と思いながら読み進めていった。

でも、連載を中断した後、かなり回復した後の部分の文章を読むと、確かにこちらに伝わってくる空気のようなものがよくなっているし、読んでいても、あまりしんどくないのだ。

良くなった後は、文章も心なしか落ち着いているし、食事を落ち着いてとることができている様子にも、筆者の回復度合いが伝わってきて喜ばしい。

そして、全編に渡って、再婚相手の「王子」の優しさがあふれていて、素敵な人と結婚したんだなあ、と羨ましくもあり、本当によかったね、と言ってあげたい気持ちにもなり・・・。

山本文緒は、なんだかんだ言って、とっても幸せ者だと思う。

生活に困らないどころか、治療したり療養したりするだけの蓄えもあるし、素敵な旦那やスタッフにも恵まれているし。

うつ病から立ち直るのは簡単ではないと思うけれど、これからの作品に期待したいと強く思った。

このエッセイの全体から漂う、やさしい雰囲気がとても好きだ。

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